第2章 Family ~ひとつになること <双子0歳>
パソコンのキーボードを叩く手を止めて時計を見ると6時。
さすがにこんなに帰りが遅いと心配になる。
どうしようかな?迎えにいこうかな?
でもとっくに成人した弟を?
迷ってると…玄関から音がした。
ほっとしたの気持ちのまま、玄関に向かって声をかける。
「雅紀、おかえり。遅かったね?」
一旦遠ざかった足音か戻ってきた。
「翔にぃ、ただいまー、マジで疲れた。
36時間勤務とかほんとヤバイ」
倒れこむようにソファーに横になった長身の青年。
相葉雅紀。
翔の実の弟で現在のこの家の住人の最後の一人。
小児科医として家の近くにある大学の付属病院に勤務している。
今年の4月から晴れて一人前の医者になった。
研修医時代よりは若干マシになったとはいえ1年目の医師に自由な時間はほぼない。
「お疲れさん。
なに、当直のあと勤務だったの?」
「シフトは入ってなかったけど…応援頼まれてさ、1年目には拒否権ないから」
ソファーから諦めを含んだ声で答える雅紀。
「人、救う前に雅が倒れたら本末転倒じゃない?」
「大丈夫、俺、若いから!」
「って俺と2つしか変わらないじゃん?」
雅紀の言葉に納得いかないとばかりに翔は言う。