第5章 Fantastic Version <双子2歳>
いつも一緒の二人。
親である翔たちは常に【公平であること】を大事にしてきている。
でもそれはあくまで翔たちができる範囲。
いくら双子でも、全てが公平なんてことはあり得ない。
こんなこと、いままで何度もあったしこれからも何度も起きるだろう。
実際、過去に起こったとき、ご褒美で釣ろうとして…失敗したことも何度もある。
そこから学んだから…もう同じ轍は踏まない。
翔はハンカチを取り出すと涙で濡れる智の顔を優しく拭いながら腕の中の息子に話しかける。
「智?ほら、あんまり泣くと、お目目溶けちゃうよ?
お夕飯、食べに行こう?
でそのあとキラキラのパレード、みようか?
お夕飯、なにがいいかな?」
全く違う話題で話を逸らす。
これくらいの子は良くも悪くも切り替えがはやい。
別の話題を出すことで、それまでの執着が一気に無くなることは往々にしてあることだったりする。
「ごはん?」
「そう、なにがいいかな?
そぼろご飯にする?
それともお子さまランチにしようか?
カレーもあるよ。でもちょっと辛いかな?」
「おこしゃまらんちがいい」
「よし、じゃ、そうしよう?」
智の頭をポンとひとつ撫でると翔は雅紀たちに声をかける。
「ちょっと早いけど…夕飯にしよう?」