第5章 Fantastic Version <双子2歳>
エリアの中は薄暗い。
子どもたちは少し怖いのか翔の足元でしがみついてる。
翔は横山と小声で話していて気がついているのかいないのか特に足元の二人になにかするわけでもない。
ここではカメラを回すことは許されていないので薮も中島も普通にゲストとしてアトラクションを楽しむ。
薮が翔の足元の双子に気がつく。
「えーっと、青い方が智くんだったよな」
確認するように呟いてから長身を折り曲げるようにしゃがみ込み智の肩をポンポンと叩く。
「智くん、どうしたの?もしかして暗いのが怖い?」
「こーた…、しゃと、くらいの、やー」
薮の姿が視界から消えたのに気がついた中島。
二人のやり取りをみて、こちらもしゃがみ込み、和也に声をかける。
「和也くん、おいで。怖いなら抱っこしようか?」
「ゆーと、だっこ?」
「うん、和也くん、おいで」
目線が高くなれば天井から釣り下がったモニターも見える。
そうしたら気分も変わるかもしれないと思った中島が和也を抱き上げる。
それを見て薮も智に手を伸ばすと智もそれに応じるように薮の腕の中に入った。
目線が高くなって全体が見渡せるようになって嬉しそうな智。
「こーた、ありあと」
「どうしたしまして」
にっこり笑う藪。
擬似父親体験といったところか、薮自身が嬉しそうにしていた。