第5章 Fantastic Version <双子2歳>
歩き出してすこしするとエリアがかわる。
そこまで来て歩みを止めた横山。
「智くん、和くん、お仕事お手伝いしてくれる?」
ベビーカーに大人しく納まっている智と和也。
二人ともいやに大人しくしてると思えば、ポップコーンバケツに入ったポップコーンを頬張り、リスみたいになっている。
その姿をみて横山が呟く。
「なんやこれ、えらいかわいいなぁ」
その声に薮が反応する。
手にしたカメラを向ける。
確かにカワイイと薮も思った。
横山の『お仕事』の一言でポップコーンバケツに突っ込んだ手を戻した智と和也。
口の中のポップコーンを飲み込む。
すかさず潤が二人にマグを渡す。
麦茶を飲んだ二人は目をくりくりさせて横山の方をみる。
「しゃと、おてちゅしゅる!」
「おしごと♪おしごと♪」
仕事ではしゃげるのは今だけだろうなぁなんてひねたことを考える大人たち。
でも、本人たちはわかっているのかいないのか?
彼らは希望の職業に付けたある意味稀有な人間であることを…。
もちろん、そこに本人たちの努力があるのは言うに及ばずだが…。
「じゃあね、二人とも手ぇ繋いで薮の方に歩いてくれる?」
うんうんと頷く双子。
「ぱぱ、かっちゃん、とってー」
「かじゅ、ててつなごー」
ふたりの言葉に翔はふたりのベビーカーの安全ベルトを外す。