第5章 Fantastic Version <双子2歳>
「それでいいの?」
思わず確認する翔に横山はにやりと笑って言う。
「当たり前や、錦織さんも了解済。
たまには親子の時間取りぃや」
「それって公私混同って言わない?」
柔らかすぎる横山の提案に翔が真面目に聞き返す。
「あほ、普段、滅私奉公しまくってんやから、かまへんかまへん。
会社的には双子の出演許可を保護者から貰えて大喜びなんやから」
そういうと双子の面倒をみていたカメラマンの薮に声をかける横山。
「薮、ちょぉ来てや。あんな…」
そう言って打ち合わせを始める。
翔が智たちに目をやると二人はADの中島と笑っている。
「ゆーと、しょーちゃ、まだ?」
くりくりの目で中島を見ながら聞く。
「ん?もう、終わると思うよ?」
膝をつけてしゃがみこみ二人に目線を合わせて話す。
そんな中島の姿にちょっと嬉しくなる翔。
「ゆー?しゃと、あっこ」
「なに?智くんは抱っこがいいの?」
「ん、ゆー、たかいの」
中島は今回取材に来ている面々の中では最も高身長だ。
その中島の目線から見る景色は子どもとっては大きな変化なんだろう。
中島は嫌がることもなく智を軽々と抱き上げた。