第5章 Fantastic Version <双子2歳>
横山からすると翔の認識の低さの方が信じられなかった。
この世界、広いようでものすごく狭い。
大体において牌の数はきまってる。
いかに売れそうな人間をスカウトするか、各事務所が凌ぎを削ってる。
もちろん、一部の超人気事務所は別だが、大手も含めタレントを商品とする以上いかに売れ筋の商品を手に入れられるかは死活問題なのである。
「あんなぁ、翔くんMr.恵桜大に何回なった?」
周知のことをあえて聞く横山。
「…2回」
「雅紀くんと潤くんは?」
「1回ずつ…」
答える翔。
中島が「眩しすぎる」って呟いている。
「大体、Mr.恵桜大に2回って尋常じゃないやん?」
呆れたように言う横山はさらに続ける。
「そのあと、スカウト山ほど来たやろ?」
「うん、断ったけどね?」
翔が当たり前のように答える。
「雅紀くんや潤くんは?」
「ああっ!」
ここでようやく思い至ったのか翔が大声をあげた。
立ち上がってしまったのもあって周囲に謝りながら席につく。
思わずため息が零れた。