第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
「今日はもう終わりだよ。
翔にいが来ると思ってたからカルテ整理してたの。
智も和も元気にしてるよ。
予定通り、来週退院で先生からOKが出たよ。
受け入れの準備もあると思うから…あとで翔にいの都合、教えてね。
あと潤くんに連絡しといた方がいいよね?」
「うん、連絡しとくよ。
終わりなら一緒にかえろう?
俺、車だし。」
「助かる…俺、もうくたくただもん。
着替えてくるからその間に智と和に会ってきたら?」
「そうする。着替えたら声かけて」
「んー」
軽い返事とともに雅紀はNICUを離れ、翔は消毒をし医療用ガウンを身に着け中に入った。
NICUにある保育器。
最初に見た時はあまりの小ささに驚いたのを記憶している。
大宮智と大宮和也。
二卵性の双子は早産で生まれた。
もともと双子だったので母親は管理入院していたのだが妊娠高血圧症候群のため帝王切開で出産せざるを得なくなった。
幸いなことに双子たちは早産だったにも関わらず、健康上支障が出るような大きな問題は一切なかった。
体重が少ないこと、各器官が未熟なことが要因でNICUで成長を見守ることになった。
そのさなかにあの事故…。
両親の愛を一身に受けて成長するはずだった双子は生まれてすぐにその権利を失った。
その両親の代わりになることを…翔は決めた。
翔は弟妹たちを至極大事に思っていた。
守るべき存在だと自分の中に大きな使命のように思っていた。
だから双子が生まれたとき、自分の子のように喜んだ。