第1章 少しだけスキャンダル<双子0歳>
都心から首都高をつかって自宅に戻る。
自宅の手前、れんがで飾られた大きな建物に立ち寄る。
駐車場に愛車を停め、【面会入口】とある扉をくぐる。
某大学の付属病院。
ここのNICUに今回の騒動のある意味、真の主役である双子が入院していた。
もともと入院していた病院から櫻井の自宅のそばにあるこの病院に転院していた双子。
この病院には櫻井の弟が小児科医として勤務している。
それもあってこの病院に転院できた。
面会時間ギリギリに到着した櫻井は迷うことなく小児科病棟へ向かう。
なじみの看護師さんが櫻井の顔をみて声をかけた。
「櫻井さん、双子ちゃんたち、今日も元気ですよ。
もうすぐですね。
今、相葉先生呼びますね?」
看護師さんに会釈して、NICU前の待ち合いの椅子に腰をかけた。
しばらくして背の高い白衣の男性から声がかかる。
「翔にい、おかえりなさい。」
櫻井を【翔にい】と呼んだ男性。
胸元のネームプレートには【小児科 Dr 相葉雅紀】とある。
「雅紀…。
おかえりなさいっておかしくない?
今日は当直なの?」
白衣の男性は櫻井の弟の雅紀。
病院内では「相葉雅紀」の名前で働いている。
雅紀はもちろん櫻井の血のつながった弟だ。
しかし雅紀が医者になる前に櫻井がアナウンサーになり、爆発的な人気が出たため混乱を防ぐことと母方の実家側の強い要望で養子に入り【相葉】姓を名乗ることになった。