第16章 ・【外伝】8番奮闘す
「ぎゃああああああああっ。」
思わず叫んで文緒を離す。あまりのでかい声に文緒が耳をふさぎながら呟く。
「そんなに嫌だったの。」
そっちではない。
「ち、ちが。」
五色も動揺しながら必死で言う。
「ヤバい牛島さんに殺される瀬見さんにどつかれる。」
「そんな事ないと思うけど。」
「だって牛島さんお前に勝手に触った奴の事いつも怒ってるし瀬見さんも心配してるし。」
「それはおちょくって触ろうとする人の事だと思う。五色君は助けてくれた訳だしそもそも私がぼんやりしてたのが悪いし。」
「そ、そーか。」
「だからもし兄様や瀬見さんが五色君の事怒ったら教えて。私言うから。」
「お、おう。」
五色は実を言うと心臓がドキドキしていてまともな返事が出来ないままだ。一方文緒は微笑んでいる。
「くそ、」
それを見て五色は思わず呟いた。
「悔しい。」
「どうしたの。」
「牛島さんが家でもお前といられるのが。」
「え。」
「でもお前が牛島さんと幸せでいてほしいとも思うから悔しい。」
「五色君は優しいね。」
「優しくなんかない。」
五色は俯いた。そう、優しくなんかないと思う。俺は最初こいつをたまたま牛島さんの妹になったよくわかんない奴って思っててでも話してるうちにそうじゃなくなってて、恥ずかしいから口には出さないけどこいつがいるのは悪くないなって思うようになってて、牛島さんもおんなじよーな感じだったんじゃないかって気づいて、でもこいつはもう。
「五色君。」
黙りこくる五色に文緒がまた心配そうに言う。
「何でもないっ。」
「そう。」
首を傾げる文緒、一方五色はすうと息を吸う。