第16章 ・【外伝】8番奮闘す

「前いたとこで散々言われた。気が利かない、周りが見えてないって。何とか両立させようとしたけどうまく行かなかった。だったら削れるところを削るしかないって。」

流石の五色も動揺してヤバいと感じた。何で牛島さんが文緒の事は阿呆みたいに心配すんのかわかった気がすると思う。だが言葉がうまく出てこず、しかも五色は文緒を離さないままその二の腕のあたりをムニムニする。
相手が文緒なのは幸いだろう。もし他の女子なら引っ叩かれても文句は言えない。

「五色君、ちょっと痛い。」

文緒が呟く。それだけの問題ではない気がするが生憎今は突っ込める奴が不在だ。五色は悪いと呟いてふと思いついた。

「お前だって怪我したらきっと困るぞ。」
「例えば」
「手怪我したら字書けないだろ。」
「う。」
「それに牛島さんの癒しはどーすんだよ。」
「い、癒しって。」
「お前牛島さんの癒し係なんだろ。」
「ごめん五色君、何言ってるのかよくわからない。」
「そーかっ。」

残念ながらキリッてな顔で言う事ではない。

「天童さんが言ってた、牛島さんがお前膝に乗っけるのはきっと癒されるからだって。」
「天童さんたらまた。」

文緒ははあとため息をつくがその意味に気づかない五色は何だよと首を傾げた。

「牛島さんだってお前の話してる時何か雰囲気違うぞ。」
「そうなの。」

見上げてくる文緒の目に何故かドキリとして五色は言葉を失いブンブンと首を縦に振る。

「意外かも。」

ポソリと呟く文緒に五色はお前もまだまだだなっと無駄に威張った。

「五色君は多分兄様と同族だからわかるのかな。」
「それ褒めてんのか。」
「どうかなあ。」
「あ、ごまかしたっ。文緒の癖にっ。」
「意味がわからない。」
「とりあえず牛島さんは何かその、いつもピシッて感じだけどお前の話してる時はホワッてしてる。」

五色の腕の中で文緒がクスリと笑った。おそらく義兄からホワッというのが想像がつかなかったのだろう。

「ところで五色君」
「な、何だよっ。」
「そろそろ離して。痛くなってきた。」

ここに来て五色はやっと気づいた。