第15章 ・お姫様じゃない
「なんというデレ。」
川西は表情を特に変えていない癖に口調が完全におちょくっている。
「結局文緒はお姫様って事ですかっ。」
五色はどストレートに捉えている。
「姫じゃない。」
若利は何故かそこだけ突っ込む。しまいに白布がああなるほどと言い出した。
「むしろ大事なお嫁様に頼むからそこいらをウロウロすんなと言いたいんですね、よくわかりました。」
ここで若利がからかうのはやめろと言えばまだ良かった。しかし
「1番近い所で言うとそうなる。」
あろう事かこいつは否定しなかった。
「ちったあ否定しろっ。」
瀬見が叫ぶ。
「何故だ、あれは今も人を惹きつけている自覚が薄い。瀬見ならわかっていると思っていたが。」
「うるせーわいっちゃん最初は無関心だった奴が言うなデレたかと思ったら溺愛しやがって極端野郎。」
「英太君、怒らない怒らない。」
「それは以前の話だ。」
「こいつっ。」
「堪(こら)えろ瀬見っ、若利相手だっ。」
「離せ山形っ。」
「賢二郎、これ火に油注いだんでない。」
「俺は事実を言っただけだ。ここんとこ一言多い太一に言われたかない。」
「実は賢二郎も楽しんでる説。」
「ぶん殴るぞ。」
「わあこわーい。」
「顔と台詞が合ってない。」
わあわあやる奴らがいる一方若利は1人呟いている。
「何故文緒が今だに自覚しないのかが解せない。」
「こっち来るまで意地悪されてたからだと思いますっ。」
「俺にはよくわからないがそれは妬みというものか。」
「多分っ。」
「五色は文緒をどう思う。」
「うっ、うええっ。」
「若利、工にそれを聞くのは酷じゃないか。」
「なら大平はどうだ。」
「だからって俺に聞くのもどうなんだ。まあ可愛らしい方じゃないか、いい子だし。」
「そうか。」
若利は呟く。表情はろくに変わらない癖に大変満足そうだった。