第15章 ・お姫様じゃない
まあこういう流れだったので当然その夜それは牛島家内部にも影響した。
「兄様、あの」
家でまた義兄の膝に乗っけられた文緒が呟く。
「少々苦しいのですが。」
「すまん。」
義兄から妙に力を込めてムギュウとされていた文緒は緩めてもらってふぅと息を吐いた。
「急にどうなさったのですか。」
「天童から妙な歌を聞かされた。」
「もしや合成音声のですか、こんな風な。」
文緒は言ってメロディをふんふんと歌う。
「それだ。」
「デジタルでああいう風に歌わせる事が出来るなんて今日日の技術は凄いですね。聞いたところでは元になる音声を合成するしくみもどんどん進化しているとか。」
「お前はSNSで余計な事を覚えてはいないか。」
「どうでしょう。」
「話は逸れたがあれを思い出していたらこうなった。」
「ええと。」
「念の為言っておく。」
「はい。」
「いちいち言わずともお前は愛らしいと思っている。」
「兄様がそう思ってくださるなら嬉しいです。」
「ただし相変わらず自覚がないのは何とかしろ。」
文緒はうーんと呟いた。
「ご心配はわかりますが仰られてもよくわかりません。そも兄様だって相変わらず女子の皆さんに人気ですよ、私が兄様にそれを何とかしろと言ったらどうなさるおつもりですか。」
若利はム、と唸る。
「その観点を忘れていた。」
文緒はでしょうと呟きそろそろ若利の膝から降りようとしたが若利が離そうとしない。
「ならせめて不要な手出しをする輩がいる事は考慮しろ。先日でかけた時の事がある。」
「はい、兄様。」
文緒が膝の上で頷くと若利は相変わらず少々不器用な手つきで文緒の頭をボフボフやった。
次章に続く