第14章 ・おでかけします 終
「お疲れさん。」
若利が話し終わったところで瀬見が言った。休日明け、朝練前のバレー部部室である。若利は初デートの様子をチームに報告していた。別に義務ではないのにいちいち言うのが若利クオリティである。
「まあ初デートでお前にしては頑張ったんじゃね。」
「そうか。」
「文緒が喜んだんなら尚の事な。」
「てか何か若利君と文緒ちゃんらしいねえ。」
「何がだ。」
「行き先とかがさ、地味っつーかまったりつーか。」
「行った場所があまり騒がしくなかった。それと今回は文緒から誘われた訳だがやはり次は俺が誘うべきだろうな。」
「お、若利君てば積極的ー。」
「愛の力って偉大ですね、瀬見さん。」
「おう。でもな川西、ついでに俺を哀れっぽく見るのやめろ。」
「気のせいです。」
「ムカつくわー。」
「唯一の問題は」
ここで白布が口を挟む。
「青城勢ですね。」
「それな。」
山形も話に乗った。
「せっかくの若利の初デートに及川と岩泉がついてきたとか何だよ。」
「暇だったんですかね、岩泉さんはともかく及川さんが。」
「及川だったらそんな事しなくても一緒に出かけてくれる女子がいそうなのにな。」
「アレじゃない獅音、彼女に振られたとかで実は今ぼっちとか。」
もし及川がこの場にいて天童の発言を聞いていたらさぞかし暴れたことだろう。
「ついてきたぐらいならまだいい、助言をもらったのも有難い、しかし及川が文緒に触れようとしたのが腹に据えかねる。」
「阿呆だとは思うけどそこまで言わんでもいいだろお前、どうせ文緒はお前以外になびきゃしねえって。」
「そういう話じゃない。」
「アハハ命知らずだねえ、よく死ななかったねえ及川。」
「許し難いですっ、文緒は牛島さんのなのにっ。」
「工、お前マジで最近どした。」
「どしたもこしたもないです瀬見さん、事実ですっ。」
「何かよくわかんねーけど頑張れ。」
「はいっ。」
「お前そこ普通に返事してどうすんだ。」
「賢二郎、工には言うだけ無駄無駄。」
「ああもう面倒くさい。」
上を向いてハアッと息を吐く白布、そこへ大平がまあ何にせよと笑う。