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【ハイキュー】ウシワカイモウト第二部

第9章 ・お出かけします その3


本当にと文緒は思う。自分は彼の思いに応えられなかったのに兄のように—それも下手すれば若利以上に—接してくれる先輩には感謝しかない。

「そうだな。」

若利が呟いた。文緒から外したペンダントはさりげなく上着のポケットに入れている。

「そろそろ出るぞ。」
「あ、その前に。」

文緒は思い出して義兄を庭に引っ張っていった。


「出かける前に何故写真を撮る。」

ガラケーのカメラを起動してうーんと一生懸命腕を上に伸ばす義妹に若利が言う。

「友達と約束をしてしまいまして。」
「文芸部のか。」
「はい、同じSNSを利用していた子です。2人の写真を撮って送ってほしいと。」
「他人が何故そんなものを所望する。」
「私達が外に出かける姿を見ないので気になるそうです。」
「よくわからない。」
「私もです、兄様。」

言いながら文緒はごめんなさい兄様と思う。しかしまさか友が自分の萌え写真コレクションに加えたいからという理由で所望したなどと言えはしない。いくら文緒でもだ。

「うーん、やっぱり自分撮り苦手だな。普段ほとんどしないし。」
「お前のあの映像機器は。」
「写真は撮れますが単体でインターネットに繋げられません。共有が困難です。」
「インターネット以外で電話に転送は出来ないのか。赤外線以外でも何かあっただろう。」
「Bluetooth(ぶるーとぅーす)の事ですか、兄様。」
「それだ。」
「林檎印のBluetoothはファイル転送非対応です。」
「そうか。」
「はい。」
「思ったのだが」
「何でしょう。」
「その端末について最低限の使い方しか出来ないというお前の話には疑問を感じる。」
「そうでしょうか。」
「ピンポイントの仕様を把握している所が特に。」
「ウェブ検索したらすぐわかる事ですからそんなものかと。」
「今度瀬見に聞く。」
「兄様、瀬見さんを困らせるのはいけません。」
「最近お前の普通はあてにならないと感じる。」
「まあ何て事。」

不本意だと思う文緒の手から若利はそれはともかくとしてと呟いてガラケーを取り上げた。

「俺が撮る。その方がやりやすいだろう。」
「助かります、兄様。」
「こちらに来い。」

若利は言って文緒を自分の前に立たせ、その片腕は文緒に回される。
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