第8章 ・お出かけします その2
「まぁそれは置いといて良かったですね、まずは第一段階クリアですか。」
川西に言われて若利はああと頷きふと言った。
「まだ何か必要か。」
「初めてのデートなんですからまぁ色々と必要かと。」
「そういうものか。」
「まず服装には気をつけてあげた方が。」
「あれははしたない格好をする奴ではないが。」
「いえ、似合ってるか似合ってないかくらいは言ったげた方がいいと思います。」
「そうか。」
「後、ちゃんと手を繋いであげるといいかと。」
「はぐれるリスクの防止か。」
「そんなとこです。あ、女子って何かと準備に時間かかるもんなのでなかなか部屋から出てこなくてもイライラしちゃ駄目です。」
「問題ない。墓参りに行く時に把握した。」
「そうそう、はぐれるはぐれない以前に1人にしないようにしたげてください。」
「もとより1人にするつもりはない。あれは未だに人を惹きつけている自覚が薄い。」
「なるべく会話もしたげてですね。」
「普段から心がけているが。」
「念の為です。」
「そうか。」
「太一、」
とうとう白布が口を挟んだ。
「お前一体何の指南してるんだよ。」
「だってさ」
突っ込まれた川西は悪びれずに言う。
「何も言わずにそのままにしたら文緒さんが可哀想な事になりそうだと思って。」
「全否定出来ないのが問題だな。」
白布は呟きそれなら川西と更に瀬見が口を挟む。
「1個大事なの抜けてる。おい若利、文緒にいつもの迷子札はつけさせるなよ。」
若利は一瞬沈黙した。
「何でって顔すんなこのやろ。」
読み取った瀬見の顔がヒクヒクしている。
「あんな文緒にはごっついもん、せっかくのデートにまでつけさせるなんてどんだけ野暮だよ。」
「そういうものなのか。」
「だああっ、もう誰かこいつに雰囲気を汲み取る事を教えて差し上げろ。」
「雰囲気汲み取る若利ってのも想像つかねーけどな。」
山形がさり気なく無茶苦茶を言うが川西がうんうんと無責任に頷くし言われている若利は何も考えていないという有様である。