第43章 ・ローカル番組事変
当の牛島家でも話題に上がった妹である文緒とその義母達が茶の間で固まっていた。固まっていないのは若利本人だけである。しばらくの沈黙の後、
「兄様っ、何て事を。」
硬直がとけた文緒が若利の腕をペシペシする。義母は息子をジロリと見、義祖母はため息をついている。
「問題でもあるのか。」
「大有りです、ローカルとはいえTV番組でまであんな事を仰るなんて見た方が妙な誤解をされます。」
「聞かれたので答えただけだ。」
「本当に天然だ事。」
「俺は天然ではない。かといって養殖でもないが。」
「兄様、腕を上げられましたね。」
「どうにもお前といるとこうなる。それより腕をはたくな、落ち着きのない。」
誰のせいだと思いつつ文緒はふと傍に置いたガラケーが振動している事に気づく。開けてみるとメールが来ている。差出人は
「あら、五色君。」
何だろうとメールを開けると
"文緒、無事かっ。"
いきなりの内容に文緒はキョトンとした。何の話かわからない。
"何の事?"
返すと程なく返信がきた。
"牛島さんのシスコンのせいでTVとかに追っかけられてねーか!"
文緒はコテンと横に倒れ、若利がそれを引き上げる。
「どうかしたのか。」
「五色君がまた妙な事を寄越してきました、兄様のせいです。」
「いつも以上に随分な言われようだ。」
見かねたのかとうとう義母が文緒さんが好きなのは結構だけど程々になさいと呟いた。恐ろしい事に若利はそれでも首を傾げていた。
そうして次の朝、白鳥沢学園高校男子バレー部の部室での事だ。
「おはよう。」
若利はいつも通り部室のドアを開ける。中にいたチームの連中がそれぞれ挨拶を返すが何となく妙な雰囲気だ。何事かと思っていたら早速天童がみょいんと近づいてくる。
「若利くーん、昨日TV見たよー。」
「そうか。」
「やー、ローカルとはいえやらかしてるねえ。」
「何がだ。」
「何がだじゃねーわっ、このやろっ。」
ここで声を上げるのは瀬見である。
「わざわざTVでまで妹可愛いを公言してんじゃねーっ。」
「聞かれたから答えたまでだ。」
さらりと抜かす若利に大平がため息をつく。