第40章 ・義兄、遠征中の話 終わり
男子バレー部でもやはりと言うべきか若利の話になっていた。
「若利今日帰ってくるんだよな。」
瀬見が言うと大平がああそうだなと答える。
「ありゃまあー」
ニイと笑うのはやはり天童である。
「英太君の一時の幸せが終了な訳ねん。」
「天童てめーっ毎度毎度いい加減聖水ぶっかけんぞっ。」
「ザンネンでしたぁ、俺はそっち系の悪魔じゃないもんねー。」
「じゃあロッカーに盛り塩すんぞこのヤロ。」
「英太君てばどんどんネタ増やしちゃってさ、やっぱり文緒ちゃんの影響。」
「天童、その辺にな。」
そろそろ天童をぶっ飛ばしかねない瀬見を見かねて大平が口を挟み山形がそれよりよと言う。
「若利にもしかしたら飯抜きの可能性伝えなくてもいいのか。例の件がマジだったらって話だけどよ。」
「必要ないでしょう。」
意外にもそれに答えたのは白布だった。横にいた川西、なかなか話に参加出来てなかった五色含むチームの連中が見つめる中白布はさらりと続ける。
「あの嫁の事です、言いながらどっかで折れて結局飯抜きにはしませんよ。よしんばしたとしてもそれはそれです。」
「賢二郎、もしかしてそれはそれで面白いとか思ってる。」
「うるさい太一、単に夫婦間の問題に触りたくないだけだ。」
「白布さんの中で文緒と牛島さんはやっぱり夫婦なんですかっ。」
「ならなかったら逆にムカつくレベルだな。」
「ツンデレが現れた。」
「そこの窓から落とされたいか。」
「おーこわ。」
時は過ぎていく。
若利は何も知らず帰りの乗り物の中で窓の外を流れる景色を眺めていた。ほとんどは充実した遠征中の日々の事を思い返して次の発展の事を考えていた訳だが途中で脳裏に義妹の顔が浮かぶ。
おそらく今頃は家にいるはずだ。当人が健やかにしているのは間違いないと思うが母と祖母が今日も不在にしているらしい中広い家で娘が1人というのはあまりよろしくないと思う。不審な奴が入ってくる訳ではなくとも淋しくしているのではと気がかりだ。