第38章 ・義兄、遠征中の話 その4
「別に虐められてるとか落ち込んでるとかはない、よな工。」
「俺が知ってる限りでも大丈夫です。大体文緒怒らせるなんて馬鹿のすることです。」
「とか言って工は何かしてねーか。」
「山形さん、どーゆー意味ですかっ。」
「よくいらねー事言って何か投げつけられるって聞いたけど。」
「べべ別に軽くて薄いって言ったらノート構えられたとか貧弱だって言ったら食べ終わったキャラメルの箱投げられたとかないです。」
「あ、それ多分俺があげた奴。」
「俺文緒から一個もらいました、ごちそーさまです川西さんっ。」
「どういたしまして。」
「そっちじゃないだろ、太一もそのまま流すな突っ込め。」
呆れたように白布が言うと川西は肩をすくめ大平はまあと呟く。
「工とじゃれ合うのはいつもだからいいとして」
五色がじゃれ合ってませんっと主張するが山形にお前一旦黙れよと言われてんぐと口をつぐむ。大平は話を続けた。
「若利がいない分文緒さんをよく思ってないのがどう出るかわからないし、本人は何気に喧嘩っ早いしちょっと気になってな。」
「大平さんまであの嫁の心配してどうするんです、一応瀬見さんもいますし文芸部の連中がついでに遊んでるとは言え結構見てますよ。」
「待て白布、一応が余計だ。」
「賢二郎の言う事ももっともなんだけど。」
大平は言いつつもやはり落ち着かなさそうであり、珍しいその様子に白布は強いて言えばと付け加える。
「あの嫁は人目がなかったら結構1人でウロウロするみたいなんで危ないとしたらそっちですが。」
「そうなるとこっちが心配しても仕方がないな。」
息をついて大平がそう話を終えようとすると白布がいっそのことと言い出した。そして続きを聞いた男子バレー部の面々は一瞬沈黙した。
「どしたの賢二郎、」
意外にもここまで黙っていた天童がぽつりと呟いた。
「何か悪いもん食ったの。」
天童に言われては世話はなかった。