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【ハイキュー】ウシワカイモウト第二部

第34章 ・無防備と漫画雑誌


「ところで兄様、」

文緒は呟いた。

「私はどうしてまた兄様の寝床にいるのでしょう。」
「縁側で寝たままは良くないと思って運んできた。」
「それはありがとうございます、しかし何故私のではなく兄様の寝床なのかがわかりません。」
「側に置きたいからそうした。」
「もう、何て事。」

文緒はため息をつきつつも微笑む。もはや仕方のない人だという思いと本当は自分も嬉しく思っている事を素直に認める思いが混ざり合っていた。

「せっかく貰った娘だ、そうしたいと思って悪い事はあるまい。」
「お気持ちは凄く嬉しいです、兄様。」

文緒はそっと布団から這い出し義兄に向かって片手を伸ばす。程なく若利のごつい手がそれを引き寄せ、まあ後はいつも通りだ。膝に乗せられた文緒はそっと若利の胸に頬を寄せてみる。義兄は何も言わずにそんな義妹の頭に手をやる。

「文緒、」
「はい、兄様。」
「寝床以外ですぐ眠るのはどうかと思う。」
「申し訳ありません。兄様に運んでいただいてばかりではいけませんね。」
「それは構わない。ただ無防備が過ぎる。家でなかったらかどわかしに遭いそうだ。」
「そんなご心配、と言いたいところですが最近は油断がならない事を思い出しました。」

若利はこっくりと頷くが

「寝るなら俺のいる所にしろ。」

そこなのか。

「兄様、問題はそこですか。」

文緒も気づいて突っ込むが若利は本気でこうのたまう。

「俺がいる時なら胡乱な輩が近づいても大抵対処出来る。」

頼もしいが何か違う気がすると文緒は思った。しかしこの手の話題を続けるといつもらちがあかないので天童に借りた漫画雑誌を若利からこそっと取り返す。

「兄様は告知や広告のページもご覧になるのですか。」
「ああ。お前は見なかったのか。」
「載せている方には申し訳ないのですが作品の方に興味がありますので深くは。」
「そうか。それにしてもこの手の広告は表現が俺には思いつかないものばかりだ。」
「そうですね。」

文緒は呟いてページをめくるがすぐに雑誌を閉じた。

「どうかしたか。」
「何でもありません。」
「熱はないようだが。」
「ですから大丈夫です。」
「相変わらず強情な娘だ。」
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