第34章 ・無防備と漫画雑誌
そうしてしばらく若利はそのまま座り込み義妹を見つめていたがやがてこのまま板の上で寝かせるわけにいかないと気がつく。起こしてやらねばと義妹の肩に手を伸ばしかけてふと止めた。起こさなくても良いのではないか、そうよぎった。普段から通常の授業に部活に家の事にと何かとやっているのだ、休みで少しくらいゆっくり寝かせても良いだろう。
気がつけば若利は眠る義妹をそっと抱き上げて、文庫本と漫画雑誌も回収していた。
つまり文緒からすればまた起きたら義兄の部屋にいた。
「起きたか。」
若利は背を向けていてその手には漫画雑誌があった。ご丁寧に朱色と黒で構成されたページにまで目を通していてる。
「兄様。」
「随分とアニメ化やイベント情報が多い事だな。」
「そうですね。」
言いながらも文緒は尋ねたいことがあった訳だが先に若利が口を開く。
「これは天童が購読している雑誌だがお前が持っているとは珍しい。」
「その天童さんが貸してくださいました。たまにははっちゃけたのも読むといいと。」
「そうか。最近周りでこれを読む者がいないとぼやいていたが。」
「もしや私は普及活動に巻き込まれたのでしょうか。」
「わからない。何か気に入った作品はあったか。」
「興味があったもののみ読んだのですがヒーロー候補生のお話と生き延びる為に施設から脱出しようとする子供達のお話とバレー部のお話が気に入りました。」
「そうか。」
「特にヒーローのお話の作者様は以前まで打ち切りばかりでなかなか芽を出されなかったそうで。」
「そうか。」
「継続は力なりとはよく言ったものです。」
「ああ、描く事についてはよく知らないがきっと紆余曲折が多々あったのだろう。ところで」
「はい。」
「このバレー部の作品といいイベント事が多い。一体どういったところに楽しみがあるのか俺にはとんと見当がつかない。」
「私もわかりません。ただ、きっと同じ作品を愛する方々が集まる事に意味があるのでしょう。」
「仲間の形の一つか。」
「私の想像ですが。」
「悪くない。」
義兄は呟き漫画雑誌を一度閉じて文緒に向き直る。そこでやっと文緒はやっと尋ねようとした事を思い出す。正直遅いが突っ込み役がいない家では仕方ないかもしれない。