第27章 ・他所の宿題 その2
その頃谷地邸では更に勉強が続いている。
「谷地さん、ノート綺麗だね。」
「ああいやそんな、えへへ。」
「影山、出来たか。」
「おう。た、多分。」
「谷地さん、文緒さーん、ちょっと見て。」
「ラジャっ。」
「どれどれ。」
今度は谷地が影山のを、文緒が日向のを見る。しかし一通り採点した文緒はまたもえーとと呟くことになる。
「日向、これは。」
「訳わかんなくなっちゃってとりあえず何か書いた方がいいかなって。」
多分これは烏野の誰も教えてないだろうなと文緒は思った。まさか国語の記述問題でわからないなら"誰とでもファーストテンポ"などと書くよう指導する奴がいるとは思えない。面倒を見ているのが主に谷地なら尚更だ。
「気持ちはわかるけどこれは流石に。」
「やっぱりダメ。」
「うん。」
「だよなー。」
自覚はあったんだと文緒は安堵する。なかったらどうしようと結構本気で思っていたのである。
「ええと、文章から抜き出せって書いてるからちゃんと探さないと。」
「うん。」
神妙な顔で聞く日向に解説する文緒、文緒は知らないがまだマシかもしれない。烏野には問題で引用された作品の主人公に対してもっと男らしくとかなんとかいう感想を書き込んだつわものがいるのだ。
しばらく直した箇所に対して文緒は解説してふと呟いた。
「日向は漢字頑張ってるね。」
「マジでっ。」
「うん。」
頷くと日向は大変嬉しそうにする。わざわざ影山の方をチラと見てドヤ顔までした。反応してわなわなする影山を谷地がまあまあとなだめにかかっている。
「影山君も地道にやってれば大丈夫だよ。バレーもそうだったんじゃない。」
そんな影山に文緒はクスリと笑い影山当人はすぐに落ち着いたのだが谷地が動揺したような顔で文緒を見た。
「どうしたの谷地さん。」
「やっぱり文緒さん凄い。」
「どうして。」
「影山君をあっという間に落ち着かせちゃった、凄い。」
「ええと。」
「流石ウシワカさんの妹さん、天然お嬢様って凄い。」
「あの、谷地さんにまで天然って言われると辛いんだけど。」
「凄い。」
「あの、谷地さん。」
うわ言のように呟き続ける谷地に文緒は大変困惑した。