第27章 ・他所の宿題 その2
「バレーボールも出来てちゃんと物知ってるセッターさんって格好いいと思うな。」
ごく僅かに流れる牛島の血はストレートに思ったままを文緒に言わせる。たちまちのうちに影山が大人しくなった。
「そ、そうか。」
唇が尖り顔が赤い。
「じゃあ頑張る。」
呟く影山に日向と谷地は固まっている。
「か、影山がデレたっ。」
「影山君まで手玉に取るなんてあわわわ、天然お嬢様恐るべし。」
「ウシワカの妹ってやっぱただもんじゃないんだな。」
「流石デス。」
「谷地さんも日向もさっきからどうしたの。」
「ナンデモアリマセン。」
片言っぽく言う2人に文緒はよくわからないなと首を傾げた。
この間義兄の若利は引き続きバレー部の練習に励んでいて、一旦休憩に入っていた。いつものように水分を補給していたのだがふと手を止める。
「どうした、若利。」
瀬見が不思議そうに尋ねてきた。
「いや」
ボトルの口を閉めながら若利は言う。
「よくわからないが何か妙な感覚がした。」
「ホントよくわかんねーな。」
「文緒に何もなければいいが。」
「何だ、家にいないのか。」
「図書館で宿題をするそうだ。」
「フーン。遅くならなけりゃ大丈夫じゃねーの。」
「こちらにいなければ迎えに行きたい所だが。」
「やめろ馬鹿、だから過保護のシスコンってんだ。」
「不特定多数が信用ならないのとあれが何度言っても人を惹きつけている事を理解しない。当然だろう。」
「やー、魅惑のロリが嫁だと大変だねえ若利クン。」
「まだ嫁じゃない。」
「つか天童は毎度毎度話をややこしくすんじゃねー、口にネギ突っ込んで生齧(なまかじ)りさせるぞ。」
「英太クン、最近の脅しのバリエーションは一体何なの。」
「突っ込む俺の身になれ、このやろ。」
瀬見と天童がわあわあ言い合うのを若利は元気で結構な事だと単純に捉え、文緒に今日くらいは自分に連絡をよこしておくよう言うべきだったろうかと真面目に考えていた。