第26章 ・他所の宿題 その1
「それは翼。ほらたまに鳩とか烏の羽落ちてるでしょ、featherってああいう感じ。」
「おおー、あれかー。」
目を輝かせる日向に文緒はそんなに目から鱗な事だったのかなと思う。
「谷地さんもすげーし文緒さんもすげー。さっすが影山が落ちた白鳥沢っ。」
「うるせぇ日向ボゲェッ。」
「まあまあ影山君。文緒さんびっくりしちゃうよ。」
「お、おう。」
「聞かなかったふりしとくね。」
文緒は苦笑して自分も宿題の問題集に目を通す。英語の小論文だった。正直わからない単語が多かったが段落の一番最初の文は何とか読めたのでとりあえず何の話をしているのかは把握した。こういうのって単語じゃなくて自分も色々知ってないといけないよねと文緒は思う。気づけばまた日向が横から覗き込んでいた。
「文緒さん、それ読めるの。」
「細かい所が正直わからないけど大まかな事はわかった。」
「そーなの。大まかな事って。」
「竹の花の事を書いてるみたい。」
「竹って花咲くのっ。」
「みたいだね、物凄く珍しいって書いてる。」
「竹の花ってどんなのかな。」
「稲の花みたいな感じだって。ああ、そういえば竹ってイネ科だった。」
「文緒さんすっげー。」
「そうかな、ありがとう。」
文緒は微笑み、そこへ谷地がいやホントにと口を挟む。
「2回受験した人は違うね。」
言う谷地に影山が2回と疑問形で言う。
「だって文緒さん他から来て白鳥沢に編入したんだよね、って事は前の学校入る時に1回と今の学校に編入する時に1回って事でしょ。」
「確かにそうだけど。」
勿論楽な道とは言い難かったが他所から改めて言われると変に照れてしまう。
「すごいなあ、白鳥沢に編入出来てウシワカさんの妹でお嬢様だもんね。」
谷地はハアアアとため息をつきそういやと日向が言う。
「文緒さん、兄ちゃんの事好き。」
いきなりの質問に文緒はどきりとするがそっちの動揺は何とか隠す。
「好きだよ、兄様として。」
半分本当の事を言った。まさか日向達の前で実は兄妹の線を踏み越えた事もその後学校で嫁呼ばわりされている事も言う訳にいかない。
「兄ちゃん優しい。」
「優しいよ、ああいう感じだからわかりにくいけど。」