第26章 ・他所の宿題 その1
日向はガラケーを取り出して即刻谷地に連絡し、流れのまま文緒は烏野変人コンビと一緒に谷地邸へと行き先を変更したのだった。
「うー、やっぱ英語しんどい。」
テーブルに顎をくっつけてベタンとなった日向が唸る。
「でもバレーボールだって用語いっぱいあって大抵英語から来てる感じだと思うけど。」
文緒は素朴な疑問を呈する。
「バレーの事は頭に入るんだよなー。」
間延びした調子で言う日向の向かいでは影山がうんうんと頷いている。
「影山君が英語苦手なのも意外だった。」
「うん、私もその気持ちは凄くわかる。」
「どのみち2人共興味の方向が極端なんだね。」
自分や義兄の事を棚に上げて文緒はさてと呟く。そんな事を言っていても自分の想像を遥かに越える烏野変人コンビのこの状態は変わらない。とりあえず皆で肝心の勉強の方に戻る。早速日向がまたうーと唸りだした。
「これ何、諺(ことわざ)。」
日向が開いている問題集のページにはいくつか英語の諺が並んでいて日本語では何と言うか書けとなっている。文緒は横から覗き込んで1問目に目を走らせた。
”The early bird catches the worm.”
ああと文緒は思った。この手の問題、手がかりなしだと日向にはキツイかもしれない。
「早い、鳥が、ええと。」
日向なりには考えようと努力しているらしい。
「文緒さん、wormって何。」
「芋虫とか毛虫とかだよ。」
「そういやうちの近所の鳥が食ってるっ。」
「う、うん。」
「でもそれと何の関係があるんだかわかんねぇ。」
これでは埒が明かない。文緒はかなり迷った挙句こう言った。
「ほら日向、早起きしたらいいことがあるみたいなのあるでしょう。」
これじゃあほぼ答えだけどと文緒は頭の片隅で思う。それでも日向はええとと考えた。