第26章 ・他所の宿題 その1
「あれ、文緒さん。」
「日向に影山君、お久しぶり。」
「おう。」
「久しぶりー。文緒さんこれからどっか行くの。」
「図書館。宿題しようと思ったんだけど家じゃちょっとだれちゃいそうだったから。」
「そっか。」
「日向と影山君は。」
「俺らも宿題。」
そのまま暑さで溶けそうな顔で日向は答える。
「でも俺ら勉強超苦手でさー、これから谷地さんち行って教えてもらうんだ。」
「谷地さんってあの可愛いマネージャーさん。」
「そう。進学クラスだから勉強得意なんだ。」
「そうなんだ。2人共頑張ってね。」
文緒はそれじゃあ私は行くねと言いかけた。が、急に日向があっと何かひらめいたかのように声を上げる。
「文緒さんって白鳥沢だよなっ。」
「そうだよ、急にどうしたの。」
「白鳥沢ってすっげー進学校だよなっ。」
「世間的にはそうみたいだね。」
みたいも何もその通りであるがあっさりそうだよとは言わないのが文緒である。
「じゃあさっ、お願いっ。」
急に日向に両手を合わせられて文緒は動揺した。
「文緒さんも手伝ってっ。」
「ええっ。」
文緒は飛び上がり
「日向てめ、他校の人だぞ。それもウシワカ妹。」
さっきまで黙っていた影山が流石にと思ったのか口を開く。
「言ってる場合じゃないだろ、谷地さん1人だけに俺ら2人分手伝ってもらうのかよ。テストの時もそうだったから悪いじゃん。」
日向なりに考えているらしい事はよくわかるがそれでも突拍子ない話に文緒は慌てる。というよりテストの時もそうだったというのは何なのか。しかも影山はそれに説得力を感じたのかうぐと唸っている。
「な。」
影山に畳み掛ける日向はある意味恐ろしいとすら文緒は思った。
「お、おう。」
そして影山は首を縦に振った。何て事と文緒が思ったのは言うまでもない。
「という訳で文緒さんっ、お願いしますっ。」
頭を下げつつ日向はほらお前もと影山を小突く。影山はほんの少し固まっていたがすぐにこちらもでかい図体で頭を下げた。
「お願いしあっす。」
そして文緒は勢いに負けた。
「う、うん、いいよ。でも谷地さんとこ行くんだよね。」
「すぐ電話するっ。」