第21章 ・海へ行く話 その2
「やはり兄様の天然は最強ですね。」
「納得がいかない。」
「そこについて頑固なのは置いておきますが兄様、」
「何だ。」
「手が痛いです。」
何と文緒はずっと若利に手を握られたままだった。
「そうか。」
若利は呟いて文緒の手を離す。しかし、
「五色、すまんが文緒と場所を替わってくれ。」
文緒の意図とは違う方向になった。
「はいっす。」
「あの兄様、」
「どうした。そっちの手が痛むのだろう。」
「その、別に何も繋ぎ直そうとされなくても。」
言いながら文緒はそおっと背後を見やる。案の定天童がニヤニヤし山形は呆れた顔、瀬見は片手で顔を覆って俯き大平は苦笑している。白布はいつもの冷めた顔だが表情の読みづらい川西が一番油断ならない。内心大笑いしそうになっているのではあるまいか。だがしかしそれを義兄が気づいてくれるはずもなかった。
「人が多くなる所に近づいている。離すわけにはいかない。」
「ああもう何て事。」
ストールの端で顔を隠して文緒は呟いた。
そうこうしているうちに現地についた。
「あれ、文緒ちゃんは。」
着替え終わった野郎共が集まった所で天童が言う。
「着替えに時間がかかっているのだろう。」
呟く若利に天童はフフフーンと言う。
「ちょっと楽しみかも、文緒ちゃんの水着姿。って若利君睨まないでよ。」
「お前まで警戒しなくてはいけないようではこちらの身がもたない。」
「マジで頑固親父かよ。」
「子供はいない、まだ父親じゃない。」
「なる気自体はあんのか。」
瀬見が突っ込んでいる間に砂を踏み踏み年齢不詳の約1名がやってきた。
「お待たせしました。」
例のワンピース型の水着をまとった文緒はぴょこんと頭をさげる。はっきり言おう、バレー部の連中は凝視していた。白布ですらへぇという顔をしている。