第21章 ・海へ行く話 その2
「瀬見も毎日大変だな。」
「うかうか首を突っ込むからです。」
「容赦ねえな、白布。」
「まあそれが瀬見さんなんでしょうがって太一笑うな。」
「無理。横にすげーツンデレいるんだから無理。」
「こいつ。」
睨む白布に対し川西は知らんぷりである。一方では五色が文緒のストールに興味を示している。
「文緒、何だこのひらひらしたの。」
言いながら勝手にストールの端をつまんでも若利に睨まれないのは五色だからだ。
「ストールだよ、五色君。」
「何でそんなのつけてんだ、暑そーだぞ。」
「日差しがきついし冷房がきついとこもあるからってお母様が。」
「かーちゃんに着せられたのか。」
「何か妙に心配されちゃってるみたいで。」
言いながら文緒は出かける直前の事を思い出す。
「いってまいります。」
若利と出ようとしたその時文緒は義母にちょっと待ってと呼び止められた。何だろうと思っていたら義母は一度奥にいっておもむろに戻ってきたかと思えばストールをやや強引に文緒の首に巻いたのである。
「お母様。」
不思議そうにする文緒に義母は日差しは強いし冷房がきついところもあるからとボソリと呟いた。あまり表情が変わらなかった辺りは親子なだけあって誰かに似てるかもしれない。
「そんな感じだった。」
「へー。」
「五色、何故俺を見る。」
「何となくですっ。」
「五色君は本能的にわかるのかな、やっぱり。」
「俺をどーぶつ扱いするなっ。」
「難しい事言わないで。」
「何だとっ。」
「だって私最近クラスで五色君の係にされてるんだよ。まるっきり飼育係扱い。」
淡々と語る文緒に五色はうがーっと声を上げる。
「何で俺が兎とかめだかみたいな扱いになるんだっ。」
「寧ろ犬かなあ。」
「何をぅっ。牛島さんっ、文緒に言ってやってください。」
文緒の義兄に申し入れる五色だったが
「何か問題があったのか。」
当の義兄殿はキョトンとしており、天童がブフォと吹き出した。
「俺は犬って事ですか、牛島さん。」
「いや」
結構衝撃を受けた顔をする五色に若利はそのつもりはなく追い討ちをかけた。
「冗談の応酬を楽しんでいるのかと思っていた。」
固まる五色に対し他の野郎共も我慢できなかったらしい。たちまちのうちに笑い出した。