第21章 ・海へ行く話 その2
そういう訳で当日である。
「みんないるかい。」
待ち合わせ場所にて大平が声をかける。
「おっけーだよん。」
「文緒もいる。」
「兄様、わざわざ仰らずとも。」
「失念されては困るからな。」
「ハハハ大丈夫だよ、若利。」
「つかお前文緒の手え握りすぎ。」
瀬見が指摘すると若利は素で首を傾げる。
「用心してはいけないのか。」
「お前やっぱ文緒の事幼稚園児って思ってねーか。」
「園児にしては大きい。」
「そーゆー話じゃねーよっ。」
「そうか。文緒、手をモゾモゾさせるのはやめろ。」
「離してください兄様。」
「牛島さん、文緒怒ってますっ。」
「何故だ。」
「ちっさい子扱いすっからじゃね。」
山形が呟いたところでよしと大平が言った。
「みんな大丈夫なのはわかったから行こうか。」
そういう訳でごつい野郎ども8人と年齢不詳の少女1人はぞろぞろと歩き出したのだった。
ぶっちゃけ目立つ集団だった。例によって若利がとりわけ人目をひく。しかしこの所のパターンを考えるとでかいだけで人目を引いている訳でもなさそうだ。
「文緒、ちゃんといるか。」
「おります。」
「そうか。」
「兄様、毎度ご心配が」
「過ぎる事はない。」
「まあ、先回りされるなんて。」
「パターンを把握した。」
「パターンになるのはどうにかならないものでしょうか。」
「聞き分けの悪いお前に問題がある。」
「何て事。」
年齢不詳の約1名と繰り広げる妙な会話が周囲の笑いを誘っている。
「おいそこのど天然兄妹」
ヒクヒクしながら瀬見が言った。
「さっきからその会話どーにかなんねーのか。」
「兄様が天然全開でらっしゃるからです。」
「お前に言われたくはない。」
「どっちも一緒だっつーのっ。」
「やー今日も英太君の突っ込みが冴えるねえ。」
呑気に言う天童に対し山形がてゆーかよと呟いた。