第20章 ・海へ行く話 始まり
「良いのですか。だってチームの皆さんと行かれるのでしょう。」
「元々天童が強くお前の同行を希望していた。今日の所は一度断ったのだが。」
「私がいる意味がありませんものね。」
「いや、お前の肌を人前に晒すのは我慢がならなかった。」
「あの兄様、」
「何だ。言っておくが落ち着いている。」
「まさか私がプール行く話が流れてなかったら。」
「断れと言ったかもしれない。」
「何て事っ。」
文緒が小さく膝の上で飛び上がる。
「それはともかく」
若利は義妹を膝に乗せ直して話を進めた。
「お前としてはどうなのだ。」
「他の方も問題がないのならご一緒したいです。」
「明日伝えておこう。」
「お願いします。」
「ただ水着は着なくていい。」
文緒はキョトンとした。
「行くのはいいのにどうして。」
「先程から言っている、お前の肌を人前に晒す訳にいかない。」
「そんなに気になさらずとも。」
「ちゃんと服を着ていても手を出そうとする輩がいる。肌を出すなど以ての外だ。」
ところが義妹は意外にも抵抗してきた。
「兄様、それでは学校の水泳の授業はどうなるんでしょう。」
「あれは義務だ、仕方がない。」
「男子もいる中で肌を晒している事には変わりがありませんが。」
「授業の場合は監督の目がある。」
「あまり変わらない気がします。そもそも兄様だってそういう時は女性の目をひいているかもしれませんよ。」
「事情が違う。お前は女子の中でも更に物理的な面で弱い、いつも言っている。」
「そこは認めますがしかし」
「とにかく俺は了承できない。」
まあ何て事と文緒が呟く。
「兄様念のため申し上げますが、私はそんな露出度の高い水着は持っておりませんから。」
他からはなかなかわからないかもしれないが若利は大変疑わしそうな目を向けた。文緒に対して若利がそういう目をすることは早々無い。余程の状況である。仕方がないと言いたげに文緒はちょっとお待ちくださいねと呟き若利の膝から降りて一旦自室へ戻っていった。