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【ハイキュー】ウシワカイモウト第二部

第19章 ・共有


「いつも思いますが不思議なものです。」

縁側で水分を補給しつつ文緒が言った。

「何がだ。」
「身近にお美しい方がいらっしゃる中兄様が私をお選びになった事が。」
「例えば。」
「烏野のマネージャーさん達ですね、大人っぽい美しさと素朴な美しさといった所です。」
「そうか。」
「後はそう、条善寺のマネージャーさん達。3年の方は引退されたそうですがお綺麗な方で後任の方も整った顔をしておられました。」
「また条善寺か。」
「たまたまお話しする機会がありまして。選手の方には手を焼いておられるようです。選手の方は贅沢だというのがよくわかりました。」
「そういう問題ではない。」

呑気に足をパタパタさせるずれた義妹に若利は自分の事は棚に上げて困ったものだと思う。

「大丈夫です兄様、選手の方は3年の方に睨まれておとなしくされてました。しきりにうちの馬鹿達がごめんとも言われましたが。」
「当然だ。」
「兄様、お顔がひどいです。」

無意識に眉間に皺がよっていた若利は我に帰る。

「俺にとっては他はどちらでもいい。確かなのは今お前がここにいるという事だ。」
「兄様。」
「そろそろ再開する。」
「はい。」

文緒は言って縁側からぴょこんと降りた。


再びバレーボールが宙を舞う。

「それにしても」

うち返しながら文緒が尋ねた。

「どうしてまた私にバレーボールを。」
「何となく」

頑張って加減しながら若利は答える。

「そうしたいと思った。」
「嬉しいです、兄様。」

文緒は言う。

「私は兄様が打ち込んでおられるものにあまり触れてはいけないと思っていました。前にいたしかたなく教えていただいた時を除いて。」
「そうか。」
「あっ。」

若利が返事をしたところでオーバーで返そうとした文緒が失敗し、ボールがあらぬ所へすっ飛んでしまう。

「申し訳ありません兄様、とってきます。」
「ああ。」

若利は呟きトトトと走ってボールを取りに行く文緒の後姿を見つめていた。

「俺は」

無意識にひとりごちる。脳裏にまたあの人の顔が浮かんだ。

「俺は」

言っているうちに文緒が戻ってきた。

「お待たせしました、兄様。」
「文緒、」

少し息を切らしながらボールを抱えてやってきた義妹に若利は言った。
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