第4章 《ご飯粒》
「相変わらずよく食うなぁ~赤葦!でも清川、これがコイツのスタンダードだから。これがコイツの普通だから。それに赤葦全然太らないしさ!いいんじゃねぇの?赤葦だってちゃんと後で動けるかどうか考えながら食ってんだろ!!多分!!!」
「ちょ、木兎さん、食べ物口に入れたまま喋らないでくださいよ…」
喉に流し込み終わったのか、赤葦さんが眉を寄せながら木兎先輩に注意する。
「そうですよ木兎先輩。ついでに口の横付いてます。ご飯粒が」
「俺赤葦のフォローしたのになんか怒られてる!?!?なんで!?ってか、どこについてる?右?左?」
赤葦さんと同じくリスの様に膨らんでいた頬を収めて、木兎先輩は口の周りを触っている。
「いや、左右どっちもですね…あ、もうちょい上です。あ、少し右…行き過ぎてます…あぁもう、取ってあげますから!」
沢山ご飯粒は付いているのにその位置になかなかたどり着かない彼の骨ばった逞しい手を下ろして変わりに取ってあげる。はい、全部取れましたよと声を掛けるとサンキューな!と言って颯爽と、遠くの黒尾さんの輪に混ざって行った。
ほんとに自由な人だなぁ…
「………」
いつもより少し低めのトーンで私を呼ぶ赤葦さんの声が聞こえて、私は振り返る。
「何ですか赤葦さ…って何やってるんですか赤葦さん…?」
そこには、少し頬を膨らませてーーこれはご飯ではなく、ぶすっとしているだけーーご飯粒をその頬に沢山くっつけた赤葦さんが立っていた。
割と真後ろに立っていたので、180を超える彼を見上げるのは結構きつい。
「…俺にもご飯粒付いたから。とって」
拗ねたような言い方と態度に、不覚にもキュンとくる。
どうしてこの人は、こんなに可愛いのだろうか…
「赤葦さん明らかに自分で付けてますよねソレ。自分でとって下さい」