第2章 桜の木が恋をした。
数分間、嗚咽交じりで涙を流していると彼が抱きしめてくれる。
…しかし、その手は消えかけていた。
「っ?!」
どんどん透けていくからだ。
「消えちゃうの?!」
大声でさくらは叫ぶ。
「えぇ。」
彼は微笑んだまま。
「嫌だっいやだ!」
手をつかもうとしても通り抜けてしまう。
涙が溢れてぐしゃぐしゃの顔を彼に向ける。
「さくら」
不意に名前を呼ばれた。
「…好きです」
「…っ‼︎」
涙が止まらない。
消えかけてる彼に近寄る。
彼は優しい目で微笑んでさくらにキスをした。
その瞬間、何もなかったようにざぁぁあっと風がふく。
さくらの木はなくなっていて何事もなかったように時が流れていた。