第2章 桜の木が恋をした。
〜桜side〜
さくらの木の質問に彼は少し、困ったような、寂しそうな表情をした。
そして、私のほうに数歩近づいてきた。
しかし、嫌ではない。
私の隣に、一歩開けたぐらいの所に立ち、さくらの木があった場所を見つめる。
なぜか、見たことのあるような眼差し。
「あの…失礼ですがお名前は?」
自然と口が動いてしまう。
彼は少し驚いたような、戸惑ったような表情を見せた後…
「さくらです」
と、答えたのだった。
「さくら?私も同じ名前です!」
そう言って、彼の目を見た時。
彼の目が、綺麗なさくら色の目をしていることに気づく。
目を見張って息をのむ。
前からずっと、私に微笑んでくれた。
私をずっと、見守っていてくれた。
ずっと……
自然と目から涙がこぼれる。
「さくらの木…」
彼は一瞬、目を見張ったが、彼女の表情を見て
何かを察したように
「はい。」
と笑顔で答えた。