第2章 桜の木が恋をした。
〜さくらside〜
塾帰り、友達とおしゃべりが弾んで遅くなってしまう。
急ぎ足でさくらの木の前を通る。
だが、さくらの木に挨拶するのを忘れ、
少し過ぎたところであっ、と声をあげUターンをして
さくらの木の前に戻ってきた。
いつもみたいに微笑みかける。
『綺麗だよ』
その瞬間、強い風がざぁぁあっとふく。
乱れる髪を手で押さえながら風が止むのを待つ。
そして、前を向くと…さくらの木がなかった。
「えっ?!」
つい、大声を出してしまって辺りを見渡す。
すると、隣にいつの間にか男の子がいた。
数秒間ぽかん、としたまま見つめあった後、
「こんにちわ」
と男の子が話しかけてくる。
「こ、こんにちわ」
恐る恐る返事をして、またさくらの木があった場所を見る。
「あ、あの、ここにあったさくらの木、どうしたんでしょうか?」
いきなり、初めて会った人にこんなことを聞くのは変かもしれない。
だけど、聞かずにはいられない。