第1章 Umbrella【1】
と話すようになってから彼女は何かと俺に声をかけるようになった。
話す内容は実にどうでもいい話ばかり。
今日の朝ご飯だとか、今日見た夢の話だとか、本当にくだらない話。
彼女と一緒にいるようになってから気が付いたことがある。
彼女はあれ以来、雨に濡れることはなかった。
それはまあ当然だ。
雨の日は必ず彼女の家に行って一緒に登校しているから。
そして帰りは一緒に帰る日々。
天気が晴れていれば肩を並べて。
天気が曇っていれば「雨降るといいね」って言って。
天気が雨の日は傘を差して楽しそうに笑って。
俺は部活があったけど、彼女は待ってくれていた。
教室で歌を歌っていたり、廊下でダンスの公演をしていたり、時間を潰して。
「、帰ろう」
「うん」
この日も雨が降っていた。
一つの傘に、肩を並べる。
これが、俺達二人の「普通」になっていった。
教室では俺とは腫れもの扱いだ。
誰も近づいてこない、話してこない。
それでいいとさえ最近思い始めている。
なぜなら彼女と一緒にいるのが楽しいからだ。
クラスの中にいるより、何倍も何十倍も。
なんでかはわからない。
「赤色タイル発見!!」
の声が俺の耳に響く。
その合図で赤色のタイルを踏むだけのゲームが始まる。
毎日の日課になりつつある。
飽きるなんてことはなかった。
街灯の下、二つの笑い声が響く。
傘を地面に捨てて、マンホールの上に立つ俺ら。
だけど、小さな円に二人は乗れなくて体格的に小さいがバランスを崩す。
その腕を咄嗟にひいて、自分の方へ抱き寄せた。
自然とを抱きしめる形になって、俺は一気に顔に血が上った。
思ったよりも小さくて、思ったよりも柔らかい体には女の子なんだってことが急に意識されてしまったから。
「ご、ごめん!!」
「なんで謝るの?」
「え、っと……それは」
言葉を濁す俺。
確かになんで謝っているんだろう。
別に悪いことしてないのに。
だけど、なんか、謝らないといけない気がするのもどうしてだろう。
すると、隣でくすくすと笑う声が聞こえて「どうしたの」と聞いた。