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Umbrella【縁下 力】

第5章 Umbrella【5】





体育館へ行くと、部員全員彼女の姿を見て驚愕した。
事情を話すと真っ先に激怒をしたのは西谷と田中だった。
大地さんやスガさんも静かに怒っていた。

「縁下、今日は連れて帰っていいぞ」
「わかりました」

彼女の手を引いて俺は玄関へ向かう。
戸惑うに清水先輩は「また明日」と手を振った。
それに応えるように彼女も手を振った。

雨の中傘を差して二人並んで帰った。
沈黙が包み込む。
何を話せばいいのかわからない。

「……」

俺は立ち止まり、彼女に話しかける。
不思議そうに俺を見る彼女を俺は見れない。

「また、俺のせいで傷つけてしまったね。ごめん……」
「……縁下くんのせいじゃないよ」
「でも……」

俺が君の近くにいたから。
だからこんなに身も心を傷つけてしまった。

また長い沈黙が流れた。
雨の音だけが耳に響く。
そんな中、彼女はゆっくりと口を開いた。

「縁下くん、"好き"ってなに?」
「え?」
「私わからないんだ。好きってなんだろう」

彼女はどこか哀しそうな顔で言った。
スガさんのことを好きな女の子が彼女とスガさんが楽しそうに話しているところを見ていたらしい。
女の子は深く傷ついて友達にそのことを話して、今があると言った。

「好きってわからないから私は菅原くんと話したし、でも好きってわかったら菅原くんと話しちゃいけないの。だったら好きって残酷だね」
「別に話しちゃいけないってことはないんだよ。ただ、いろんな人がいるから。嫉妬深い人だったり束縛が強い人だったら自分以外の人がその人と話したりするのが嫌ってだけで……」

再び沈黙が流れた。
何も言わずに雨の中歩く。
靴の中に雨が浸透して冷たい。
隣に立つ彼女の体温が温かい。

「」
「なに、縁下くん」
「好きだ」

それはあまりにも突然だった。
意図もしない言葉。
勝手に口が動いた。
気付いたときには時すでに遅い。

顔が熱い。
彼女の顔を見ると大きな瞳を更に大きくさせた。
そして彼女の脈が速くなったのが分かったような気がした。
俺は彼女の腕を取って自分に引き寄せ、唇を重ねた。

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