第5章 Umbrella【5】
「男バレに体売ってんだろ、このビッチが」
やめろ。
「静香が菅原先輩のこと好きだって知ってるくせに、なに先輩に近づいてんだよ。この腹黒女」
やめろ。
それ以上彼女を傷つけるな。
「縁下君もたぶらかしてんだろ」
違う。
たぶらかしてなんかいない。
「縁下君優しいからお前に話しかけてやってんだよ。いい加減気付け」
違う。
俺は優しくなんてない。
「死ねばいいよ」
その言葉に全身に血が廻った。
『あの日、教室に縁下くんが来なかったら死ぬつもりだった』
彼女は死ぬつもりだった。
本当は死にたくて死にたくて。
この手を離したら今度こそ彼女は死ぬだろう。
そんな気がした。
俺は教室の扉を開けた。
突然の驚きと自分たちのやっていることがバレた罪悪感で彼女たちの表情は青くなる。
「縁下くん……?」
床に倒れているは暴行がこない不思議さに顔を上げる。
目と目が合った。
彼女の頬は赤く腫れて、鼻血も垂れていた。
「大丈夫か、。保健室に行こう」
「え、あ……うん」
「俺の肩に捕まって。立てる?」
「だい、じょぶ……」
「よかった」
「縁下くん、バレーは?」
「今はそれよりの方が心配。手当てしてもらったら体育館に行こう。清水先輩も心配してたよ」
数人の女子たちが俺に何か言っていたけど、耳に入ってこなかった。
俺にはしか見えなかった。
また俺のせいで彼女を傷つけたのかと思うと、死にたくなった。
「このことは先生に話しておくから。彼女を傷つけたこと俺は許さないよ」
それだけを言って教室を出た。
保健室に行き、保険医に事情を話す。
保健医は一瞬眉を顰め、彼女の手当てをしてくれた。
そして今回のことを学校側に話し、今後の対応を考えると言ってくれた。
「ありがとうございました」
二人頭を下げて、体育館へ向かう。
本当はこのまま帰らせてあげたかったけど、が体育館へ行きたいと言ったため、俺達は体育館へと足を運んだ。