第5章 Umbrella【5】
「あのね、前に黒尾くんが縁下くんに会ったって言っててね」
「うん、会ったよGWの時に」
「やっぱり!でね、その時黒尾くんに聞いたの。縁下くん元気?って。そしたら元気だよって言っててね、よかったって思ったの」
それは……どういう意味?
どうして君が俺のことを心配するの。
「気になってたの。何も言わないでさよならしちゃったから。でも、こうしてまた会えてうれしい!!」
本当に?
本当に嬉しいと思ってる?
あんなひどいことをした男だよ。
君を見捨てた男だよ。
真実を知ったら君はどうする?
俺から離れていくだろうか。
俺を拒絶するだろうか。
「……」
「なぁに、縁下くん」
「バレー部に入部しない?」
本当はこんなこと言うつもりなんてなかった。
だけど勝手に口が動いた。
何度かまばたきをする。
一泊置いて、彼女は満面の笑みになった。
「いいの!?私ねバレー好き!!」
「本当?」
「本当だよ。最近ねルール覚えてきたの」
「じゃあさ放課後、一緒に体育館行こう」
「わかった!!……あ、そうだ」
授業開始5分前のチャイムが鳴る。
その音を聞いて教室へ戻ろうと歩き出した時、何かを思い出したようにが俺の腕を掴む。
「帰りも一緒に帰ろう」
心臓が跳ねた。
熱い。
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったから。
「うん、帰ろう」
俺はいつからこんなにも涙腺が弱くなったのだろうか。
目頭が熱くなるのを感じて慌ててに背を向けた。
話を聞くと、今住んでいる家は中学に住んでいた時と同じ家だという。
どうやらあの家はもともとの叔父の家らしく、引っ越した後の管理は叔父がやっていたという。