第5章 Umbrella【5】
そんな俺の姿をみて心配する先生やクラスメイト。
一言「大丈夫」だと伝えたが、俺と彼女の間に何かあると言うことは嫌でも察しただろう。
先生は何を思ったのか、を俺の隣の席へと座るよう促す。
どんな顔をして彼女を見ればいいのだろうか。
そんなことを考えていると、
「縁下くん、変わらないね」
って白い歯を見せて笑う。
その笑顔が眩しくて、また泣きそうになった。
休み時間になれば彼女はクラスの人に囲まれた。
大勢が苦手なのだろう。
困ったようにおろおろする。
こうしてたくさんの人に囲まれていることを本当は喜ぶべきなのかもしれない。
だけどどうしてもあの日を思い出してしまう。
人から避けられバカにされいじめに遭っていたあの日を。
「、ちょっといい?」
昼休み、弁当を食べ終わったを呼び出した。
俺達二人の間に何かあると思っているクラスメイトはひそひそと内緒話に明け暮れる。
俺の3歩後ろ。
狭い歩幅で着いてくる足音。
「どうしたの、縁下くん」
階段の踊り場。
そこで立ち止まって振り返ると、大きな瞳が俺を見つめる。
謝らなきゃ、あの日のこと。
ずっとそう思っていたのに。
言葉が喉に引っかかって出て来ない。
意気地なし。
臆病者。
俺はやっぱり変わっちゃいない。
お前の言う通りだよ、。
俺はあの日からずっと弱いままだ。
「そうだ、聞いて縁下くん!!」
何も言わない俺に明るい声が飛んできた。
もしかしたら俺を元気づけようとしているのだろうか。
「私ね、バレー部のねマネージャーだったんだよ!」
はっとした。
バレー部のマネージャー?
そう言えば前に音駒高校の黒尾さんがの名前を出していた。
そうか、だから黒尾さんは彼女のことを知っていたのか。