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Umbrella【縁下 力】

第4章 Umbrella【4】





「」

名前を呼べば彼女は肩を大きく揺らし、ゆっくり振り向いた。
大きな瞳が俺を映す。

「何してんだ、部活に行くぞ」
「うん」

本当は聞きたいことがたくさんあった。
アイツは誰なのか。
告白の返事をしないのはなぜか。
だけど聞けなかった。
聞いてはいけないような、そんな気がしたから。

は告白をまるでなかったかのように毎日を過ごしていた。
彼女を好きだと言っていた男子生徒も何度も何度もアプローチをかけていたが、態度が変わらない彼女に脈がないと判断したのか呆れたのかわからないが、2週間もたたないうちに「なかったことにしてくれ」と言っていたと研磨から聞いた。
それを聞いて彼女はどう思ったのだろうか。
いつもと変わらない笑顔を振りまく。
また、一人で傷ついているのではないかと心配になったが、きっと「大丈夫」と言うだろう。
中学のあの日以来、泣いた彼女の手を引いた日以来、彼女は俺に弱音は見せていない。

あれから数日経ったある日、猫又監督からGWに宮城県で練習試合をする旨を聞かされた。
なぜ宮城なのか。
どうやら因縁のライバルである烏野高校から申し出があり受けたとのこと。
宮城に行くのは5月3日。
烏野との練習試合は6日。
その間は他の高校と練習試合だそうだ。
部員全員連れて行くわけにもいかないためレギュラーのみ。
新入部員の灰羽リエーフは「自分も行きたい」と騒いだがレギュラーでもないし、なにより基礎もクソもなにもなっていないため連れて行くわけにはいかない。

「基礎ができたらものを言え」

夜久が腰に手を当ててそう言えばリエーフはしょんぼりと黙り込んだ。


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