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Umbrella【縁下 力】

第4章 Umbrella【4】




合宿も終わって月日が流れ俺は高校3年生となった。
音駒高校は春高に出場できず、梟谷高校は春高に出場したものの3回戦敗退。

春高予選が終わり、俺たちはいつもと同じように毎日練習に明け暮れ時間だけが過ぎて行った。
何も変わることなく続いていた日常ではあったが一つだけ変わった事と言えば、がモテるようになったと言うこと。
彼女が初めて異性から告白を受けたのは去年の11月。
季節は秋から冬へと移り変わろうとしている時期。
一人の男子生徒が彼女を屋上へと呼び出した。
肌寒い風が包み込む昼休みに告白をされたと山本から聞いた。
気になって彼女に着いて行ったらしい。

告白を受けた時のの反応は無言だったらしい。
何も言わずただじっと彼のことを見つめていたらしく、彼女を困らせていると判断した生徒は「困らせてごめん」と言ってその場を後にした。
それからと言うもの、月に少なくとも3回、多くて5回告白を受けるようになった。
本気で彼女に好意を寄せている奴もいれば、おもしろ半分で彼女の反応を見ようとしている奴もいる。

だけど彼女の反応はいつだって同じで"無言"。
この日もは告白を受けていた。
古文の課題を提出し忘れた俺は他の連中より遅れて体育館へ向かっていた。
その途中、渡り廊下の隅の方でと男子生徒がいた。
微かに聞こえてきた「好きです」という言葉。
どう返事を返すのかと思っていたが、彼女は何も言わなかった。

「……あのさ、なんで何も言わないの?」
「……」

しびれを切らしたように彼は言う。
確かになぜ彼女は無言なのだろう。

「ほかに好きな人、いるの?」

ドクリと血液が全身に駆け回った。
一度も聞いたことがないけれど、に気になる人はいるのだろうか。

「好きな人……は、いないよ」
「そう……。じゃあ少し考えて。俺本気でさんのこと好きだから」

そう言って彼はどこかへ行ってしまった。
ぽつんと佇む彼女に俺はゆっくり近づいていく。


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