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Umbrella【縁下 力】

第2章 Umbrella【2】




を家まで送り届けて、俺は家へと戻る。
ベッドに寝っころがると頭の中がぐっちゃぐっちゃにかき乱される。

雨でもないのに濡れている姿。
汚れたうち履き。
涙を流す帰り道。

傘の中でいつも笑っていた。
いじめに遭っていても彼女は何もなかったかのように笑っていた。
それがもし、誰かのための笑顔だとするならなんて悲しいことだろう。
あの笑顔は彼女の胸の内を隠していた。
彼女自身、自分の気持ちに蓋をしていた。
傘の向こう側は赤信号というわけだった。

俺は勘違いをしていた。
気を許したから傘の中に入って、笑顔を見せてくれていたと思っていた。
けど、それは間違いだ。
気を許していたんじゃない。
たぶんあれは俺に対する許されたいと願う行為だ。

裏切られただとかそんなことはどうでもよくて、俺が言いたいのは、彼女の本音は今日みせたあの涙だということ。

「そりゃそうだよな」

いじめに遭ってなんで笑っていられると思っていたのだろう。
普通に考えてみれば、泣きたいに決まっている。
怒りたいし、叫びたいし、最悪死にたくなる。

彼女が許してほしいと願うなら俺は許そう。
いや、その前に許す許さないとか関係なくて俺にもっと本音をぶつけてほしいと言うのが正直なところだ。
隠し事をするなとは言わないけど、弱音吐いたっていいんだ。
強くなくたっていい、人間なんてみんな弱いんだから。


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