第2章 Umbrella【2】
「……慰めてあげてるんだ」
「え?」
「空だって泣きたいんだよ。でもね、みんな傘を差して見て見ないフリしてる。だからね、私が慰めてあげてたの」
「じゃあ、今は?今は慰めなくてもいいのか?」
「うん。見て見ないフリ、しなかったから」
意味が分からなかった。
きょとんとする俺にはにんまり笑って、
「黒尾くんは縁下くんとそっくりね」
えんのしたくん?
前に学校のクラスメイトの名前か。
「へえ。どんなふうに似てるんだ」
「見た目は全然似てないよ。縁下君は誠実って感じで黒尾君は胡散臭い人!」
「おい、それどういう意味だ」
「でも、二人とも痛みに敏感な人」
ばしゃん。
は傘の中を飛び出して、ジャンプした。
みぞれが彼女の足を濡らす。
ばしゃん。
ばしゃん。
「風邪ひくだろうが」
「……うん」
彼女の腕を掴んで傘の中に閉じ込める。
沈黙が二人の間に訪れる。
聞こえるのはみぞれが傘を叩く音と2人分の足の音のみ。
後はたまに通る車の音だったりすれ違う人の声だったり。
それでも傘の中は二人だけの世界みたいで、俺達の世界は静かな時間だけが流れ去る。