第2章 Umbrella【2】
「洗ったほうがいい?」
濡れた髪と顔を拭いた後、彼女はそう言った。
「いいよ、大丈夫」
「……わかった!」
一瞬間が開いた後、白い歯を見せる。
俺は濡れたタオルをバックにしまい、二人並んで歩く。
ばしゃん、ばしゃん。
無言の時間が流れる。
けど、居心地の悪さはなくて。
「なあ、名前なんていうんだ?」
珍しく柄にもないことを聞いていた。
「!宮城県から引っ越してきたの」
「俺は黒尾鉄朗デス」
それからと言うものの、学校で彼女を見かける度に声をかけた。
話しかければ嬉しそうな顔をして白い歯を見せて笑う。
何度か一緒に帰り、学校で声をかけているうちに気が付いたことがある。
彼女はいつも一人だった。
転校して3ヶ月が経つのに、いつも一人で校内を歩いていた。
そして雨の中で踊るはいつも満面の笑みだというのに、校内での彼女はいつも表情がなかった。
研磨に聞いたところ、彼女に話しかけるクラスメイトは最初のうちはたくさんいたようだ。
しかし、彼女の奇怪な行動をみるうちに誰も寄り付かなくなったらしい。
もっと聞けば、彼女が転校してきたのは前の学校でいじめに遭っていたようだ。
原因はやはりの言動のせいなのだろう。
だけど、それでも俺から見る彼女はいじめなんて初めからないかのように笑っていた。
帰り道。
みぞれが降る中、俺は傘を差して隣で歩くを横目で見る。
傘の中のはみぞれを眺めて嬉しそうに微笑んでいる。
「……あのさ、一つ聞いていいか?」
「なに、黒尾くん」
「なんでいつも雨に濡れてるんだ?」
俺が話しかける前の彼女は雨が降れば濡れていた。
だけど、俺が気になったというにもあるが話しかけてこうして一緒に帰るようになってから彼女は一切雨に濡れることはなくなった。
だからこそ思う。
どうして雨の中、両手を広げて踊るのだろうか。