第52章 嵐 コンサート 中盤
浜地視点
本郷君からの木の葉を受け取ってしばらくした頃
宮{ハマヂ}
不機嫌な宮様の声。
≪はい どうされました≫
猴{いらぬ客が来たぞ}
お姿が二宮さんと同じくらいの年姿に戻られた。
(お心が強張っている!)
チーフも感じたのか 桟敷間の端に立ち直した。
翁{人のマネばかりしおる サルよ 今宵は呼ばれたのかぇ}
唐草文様の袍裳の翁が笏を口もとに添え、現れた。
(この方は猴宮様の異母兄王 蔓芭(マンバ)様
なぜ この宴に お姿そのままでお越しになったのか…)
猴{これは これは 蔓芭の兄王 お久しぶりです}
猴宮様が気持ち悪いくらい丁寧に対応する。
翁{久しいとな? はて 最後に合ったのは…}
笏を腕に数度あて 考える兄王様。
(貴方に大社から追放された時以来ですよ…あの顔は 今でも憶えています)
翁{ん まぁよい 昔のことよ}
口角をイヤらしく上げる兄王様
(和寿様に赤子の雫様を抱かせ 葛籠まで背負わせ追い出したではないですか!
それを そ そんな言葉で流すとは…)
宮≪おちつけ お前がそんなに怒るな≫
顔を向けず小さく呟く宮様
翁{ときに サルよ
我の座は御簾所ぞ なぜ サルは桟敷間なのかのぉ
演舞者のひと柱は今世の サル ではないのかぇ
ちごうたか}
笏で隠している口元が笑っているのが手に取るようにわかる。
(何が言いたいのですか ムカつきますね)
猴{ええ 今世のサルの晴れ舞台 より 近くで見守るのが 前を生きた者の務め}
懐から 槿の花を出す。
猴{今は 演舞中です
どうか お席にお戻りになり 嵐の演武を楽しんでください}
花を持っていない方の手を御簾所の方に向ける。
翁{帰れと言うのか! サルの分際で この儂に指しするか!}
口調が荒くなり容姿が安定しない。
猴宮様が ふうと小さく息を吐いて腰を上がる。
猴{我には猴宮という名の宮を父王より いただいております。
兄王よ 次にお会いできる時には ぜひ 宮の名を呼んでくださいませ}
堂々と胸を張る猴宮様。
翁{宮…宮だとぉ この儂より 先に宮を構えおってぇぇ}
翁の顔が憤怒していく。
藤渕≪桟敷で抗争はお控えください≫
三鈷剣の剣柄を握るチーフ。