第44章 通しリハ
櫻井視点
スタッフ「こちらです」
底まで下りるとスタッフが誘導する。
三人がステージ下の着替えスペースに向かって歩いて行くのを確認してから側に控える吉桜を手招きする。
吉桜は黙って側に来る。
「霊力のバランスを整えろ」
吉桜「かしこまれました」
すーっと離れていく吉桜。
(今の霊力は ニノだ…)
O「はぁっ…」
智くんのため息のような声が聞こえる。
(智くん… ニノだって成功させたいんだよ…)
スタッフ「櫻井さんも どうぞ」
「ああ」
密着のカメラが赤いランプを付けて立っていた。
「疲れた」
カメラマンに今の俺の気持ちを言葉にして伝える。
ステージの真下の着替えブースで次の衣装が準備されていた。
「よっこらしょ…」
椅子に座って靴を脱ぐ。
(次は“Love so sweet”だから…白いパンツ…)
吉桜「翔様」
俺にだけ聞こえるような声で背後に立つ吉桜。
「ん」
掴んだ白いパンツをはきながら、聞き耳を立てる。
吉桜「大神様が対応しておりましたので ご安心ください」
「ん わかった」
振り向かず淡々を衣装に着替えていく俺。
(結界石が光った時点で 動くよな… 俺はコッチに集中しないと…)
スタッフ「スタンバイお願いします」
「はーい」
椅子から立ち上がって、ステージ横に向かう。
O「翔くん…調整 動いてる?」
智くんが近づいてきた。
「うん さっき報告が来た」
歩きながら返事をする。
O「ちょっと 心配…」
肩を少し落とす智くん。
「ニノが?」
立ち止って智くんの表情を確認する。
O「みんな…」
小さく顔を振って呟く。
(智くんの 憂いは晴らしおかないとなぁ…)
「大丈夫だよ 俺たちには“花”があるから!」
そっと智くんの肩に手を乗せる。
本郷「どこですか?」
空のお盆を持った本郷君が少し慌てた顔してウロウロしている。
(あれ…雅紀がいない?)
「どうしたのかな?」
O「大丈夫だと思うよ?」
智くんが呟く。
「そう?」
智くんの顔を見る。
O「うん 翔くんはニノの方よろしく…」
ちゃんと顔を上げてほほ笑む智くん。
「ふふ 了解」
智くんの方から手を離して自分の立ち位置に向かう。