第29章 リハの合間
大野視点
雨の降ってる合間を縫って、上下の移動と ステージ移動をこなしていく。
(雨…ひどくならないといいなぁ)
ステージに立つメンバーの動きを見る。
(うーん… … 大丈夫かな…)
何度目かのステージ移動の時、ステージの裏のすみで翔くんがみんなと違う動きをしている。
(何してるんだ?)
スタッフ「どうかされましたか?」
カメラを持ったスタッフが翔くんに近づく。
S「靴に泥が付いて、重いし、泥が滑る…」
(土?)
足下を見る。
S「赤土泥って最悪だよ…粘土みたいだもん」
(あぁ確かに…)
自分の靴についた赤土を床に擦り付けながら今歩いてきたところを見る。
(足跡…一杯だなぁ…)
スタッフ「ステージは、こまめにふき取りますので、気を付けてください」
S「そうだね。気を付ける。スタッフの皆にも、伝えといて」
笑顔で対応する翔くん。
(やっぱ俺の翔ちゃんはやさしいなぁ)
「そうそう!何事にもケガだけはしないように!!」
カメラを持つスタッフに俺も声をかける。
カメラのレンズが俺の方を向く。
S「もうそれ、格言化してるよね?」
少し困った顔の翔くん。
(ふふ その顔も好き)
「『気を付ける』に、過ぎるはないよ?」
おどけた顔をする。
S「そうですね。各自『気を付けましょう』」
肩を窄める翔くん。
「うふふ」
(さー やるぞぉ)