第9章 特別製の舞台
二宮視点
S「…ぁぁ …ぁしぃ よろしくお願いしまーす」
(翔ちゃんの声がした?)
ゆっくり、目を開ける。
和専属「お目覚めですか?」
浜地が小さく声を掛けてきた。
「うん…」
自分が立っている所を確認。
すぐ後ろに、浜地が立っている。
(あー少し眠っていたのか…)
カメラが俺を撮っているのを感じた。
{映像 滞りない}
“理解者”の声を聞き、一つ 息をつき、体を動かし始める。
(どんだけ自分達が頑張っているか、見せるに良いと思うし、
NHKだし、
カメラを回している人は、みんな昔から知ってる人たち…
変な言い方すると、お互い様…
自分達もこう言う企画がないと、自分達の行動を見ることはない…
これからは、一人の大人として自立して行くため…
そして…)
和専属「二宮さん…ご気分が優れませんか?」
心配そうに言う浜地。
「大丈夫だよ!それより、アレのは…うまくいってる?」
和専属「そちらは、バッチリです!フルとソロを用意しました」
「うん♪いいね♪おぉしぃ!元気が出たぞ!」
浜地に向かって笑顔を見せる。
(たぶん今から先は、経験したことない…
何時の頃を思い出しても…先がない…
一番 今が長生きなのかもしれない…
だから、映像にしておきたい…
たぶん…
懐かしい映像を見る機会が多くなるはずの俺のために…)
『カズナリ 我に近づきすぎだ…』
理解者の一つが俺の背後に立つ。
≪そんな事言うなよ…≫
立った気配で振り向く。
『カズナリはカズナリの道を歩めばよいのだ。
我のような過ちを繰り返さないために…』
二本足で立つ人型の理解者が悲しそうな顔をしてフワリと浮く。
≪おい。どこに行く≫
俺から、少しずつ離れていく人型理解者。
『我と 同じ時を過ごした者の気配を感じた…しばし、そちらへ向かう』
その言葉を残して人型理解者は消えていった。
(自由人だ…)