第7章 記憶の風景
二宮視点
濡れてしまった衣装から私服に着替えた頃、雨は止んだが青空は無くなった。
ほとんどの機材も同行トラックに積み込まれていた。
チーフが一人でいたから側に行く、小さめの声で話っかける。
「ちょっといい…」
チーフ「何か問題か…」
チーフはいつものように、冷静なトーンで言う。
「問題と言うか…確認……今日…」
チーフ「櫻井…の事か?」
俺の質問が終わるまでに、返事をするチーフ。
『何かあった』と喉まで出ていたけど飲み込んだ。
「う、ううん……今日…夜は何も会食入ってないよね?」
頭をふって全然関係ない今晩の予定を聞く。
チーフは俺の表情をみて、
チーフ「大野がああだったから、予定は入れていない」
少し陰のあるほほ笑みを向けてきた。
「了解…」
(きっと、翔さんの事聞いても何も教えてくれない
だって、チーフは翔さんの事……)
チーフ「二宮…いつもすまないな…」
目を伏せながら小さく言うチーフ。
「まったくです。別手当ていただきたいぐらいです」
チーフが小声だったから、声を張って言う俺。
(ブッチさんだって苦しいはずだ。
愛する人達を守るためなら俺だって、必要なことだって言わないさ…)
チーフ「……手当てか…」
ちょっと考え始めるチーフ。
「マジくれますか?冗談ですよ?」
チーフ「………」
「じゃ…今日の晩御飯は五人でゆっくりするから『時間』ください」
チーフ「時間?」
「はい。
誰も、専属マネも もちろんチーフもいない五人だけ『時間』です」
(さっき〝宴〟にも呼ばれた…だからそれまでに、普段の自分たちに戻っていたい)
チーフ「……分かった。皆には俺から伝えておく」
チーフが許可をくれた。