第88章 挨拶する人に原稿を
櫻井視点
パンっ! パンっ!
掌を合わせた音が 二回響く。
その音の方を向くと
潤が「さー 続いてやりましょう!」と雅紀と智くんの肩に抱きよせていた。
(潤…)
M「あ・い・こ!」
潤がちょっと声をはる。
A「じゃぁぁ あいこぉで!」
雅紀の掛け声でタイミングをとって三人が同時に「しょ!」と声を出す。
成り行きを ただ 見ていた。
A「やりぃ!」
ピースサインを高く腕を上げる雅紀。
M「オッシャ!勝った!」
チョキを大事に包んで振る潤。
O「えぇぇぇ~~ おいら負けたぁ」
パーの手首を掴んで悔しそうな智くん。
見ているだけで、自然と口角が上がる。
背中にくっ付く和也の強張りも感じなくなった。
「すんなり、決まったみたいだね」
和也に声を掛ける。
N「そうですね」
背中から離れて、俺の顔を確認する和也。
(ふふ もう 大丈夫だよ)
和也の目を見て頬を上げる。
少しだけ肩が揺れる和也。
A「勝ったよ♪」
笑顔の雅紀が勝利の報告をしにやってきた。
「おめでとう」
雅紀に笑顔を向ける。
A「へへ うん!」
大きくピースサインを見せてる雅紀の顔が輝いている。
(まぶしいぃ!さすがスーパーアイドルさまだ!)
N「はいはい じゃ、おじさんが挨拶ですね?」
和也がわざわざ 俺と雅紀の間を通って智くんの方に向かっていく。
「お兄さん!」
すぐに訂正が飛ばす。
和也が俺の声に全く気にも留めず智くんの方に進む。
(マジ スルーかよ…)
「まったくもぉ 智くんをおじさん呼びするな」
ブツブツ言いながら近づく。
智くんが「おぅよ」と手を開いている所に俺の手帳を広げて手渡す和也。
(あれ 話が進んでる?)
O「えー 本当にこの原稿で読むの?」
開いたページの文書を指さしている智くん。
N「そうですよ あ もちろん アドリブ OKですよ?」
O「アドリブぅ?無理!無理!ああぁ そのままチョキ出せばよかった!」
中腰になる智くん。
M「裏読んで、読みすぎたパターン?」
ニシシと笑っている潤。
「智くんってこういう時 引きが強いよね」
(リーダー決定のときもだし…)
N「良いんだか…悪いんだか…」
ヤレヤレの声の和也。